イジワルな恋人
「えっと……『俺を水谷の彼氏にしてくれない?』って」
咄嗟に出た言葉だった。言った言葉にハっとして、なんとか誤魔化そうと口を開くも。
「えー、すっごく羨ましいんですけど」
「やばい……桜木先輩、カッコよすぎる」
「あの顔と声でそんな事言われたら頷く以外ないよねー……」
ピンク色のため息で染まった教室に、あたしは何も言わずに口を閉じた。
誤魔化す必要はないみたい。
……亮って、人気あるんだなぁ。
一緒に登校した時もすっごく視線が集まってたし。
みんな憧れてはいるけど、怖くて言えないって事なのかな。
……本当はそんなに怖くないのに。
自分だけが知っている亮の姿に、なんだか少しだけ嬉しくなる。
梓を先頭にした記者会見騒ぎは、授業が始まるまで続いた。