イジワルな恋人
「……その後うち色々あって。すぐにあたしから断ったんだ」
「でも好きな奴だったんだろ?」
そこまでしなきゃならねぇ家庭の事情ってなんだよ。
奈緒の言葉は到底納得できるモンじゃなくて、俺は俯く奈緒の返事を待った。
「まぁいいじゃん。昔の話だし。
さて、お弁当食べようかな」
でも奈緒の口から出たのは、待っていた答えじゃなかった。
……―――こいつ、何隠してんだ……?
俺の見つめる先で、奈緒は作ったような笑顔を向ける。
気になったのは確かだったけど、それを認めるのも悔しくて、結局話題を戻そうとはしなかった。
「いただきます」
奈緒がお弁当箱を開ける。
そして、一口食べてから、俺を不思議そうに見た。