イジワルな恋人
静かに吹く風が、奈緒の束ねていない髪を揺らしていく。
栗色の髪が太陽に透けて光る。
黙ってその様子を見ていると、ぱっと顔を上げた奈緒と視線がぶつかった。
「はい」
奈緒が笑顔で差し出したのは弁当箱。
「……何?」
「お弁当だけど……?」
……そういう意味じゃねぇ。
「……いいよ、気ぃ使うな」
「でも目の前であたしだけ食べるのってあたしが嫌だし。
……だし巻き卵は今日初めて挑戦したんだけど、おばあちゃんに教わりながら作ったからおいしいと思うよ?
他のも味見したけど大丈夫だったし」
「……おまえが作ったのか?」
奈緒の言葉に驚いて聞くと、奈緒は当たり前のように頷く。
「うん、そうだけど?」
……まぁ、他の女も俺のためにとか言って点数稼ぎで作ってきたりしてたし。
弁当作るくらい普通か。