イジワルな恋人
黙った俺を不思議そうに見ながら、奈緒はフォークの先の卵焼きを半分食べる。
残り半分を口にしようとした奈緒の手を、俺は伸ばした手で包むように握った。
そしてそのまま自分の口に運ぶ。
「……うまいな。おまえ、料理とかするんだな」
何も返事をしない奈緒を不思議に思って目を合わすと、奈緒の顔は真っ赤で。
俺に手を握られたまま完全に固まっていた。
「……なんだよ。おまえが食べろって言ったんだろ?」
意味が分からない反応に聞くと、奈緒は赤くなったまま理由を話す。
「だって亮が……っ、間接キス、するから……」
奈緒が小声で言った言葉が聞こえて、俺は拍子抜けする。
なんでこいつはこんなに男慣れしてねぇんだよ。
つぅか、今まで付き合った奴がいない事態がおかしいし。
……何隠してんだよ。
「はいはい。俺が悪かったよ。
早く食え。昼休み終わるぞ」
俺の言葉に、奈緒が少し戸惑いながら弁当を食べ始める。