イジワルな恋人
だけど、奈緒は明らかに俺との間接キスを気にしていて。
フォークを意識しながら食べる姿が無性に可愛く感じて、思わず笑いが零れる。
「なんで笑うの……?」
笑う俺に、奈緒が俯きがちに聞く。
その顔は少し膨れているようだった。
「……いや、なんでもねぇ。
おまえが半端に食わすから腹が減ってきたんだよ」
俺の言葉に、奈緒が笑顔で自分の弁当を差し出す。
「……さんきゅ」
差し出されたおにぎりを受け取りながら、笑みを返した。
午後の授業開始の予鈴がなると、奈緒が弁当箱を持って立ち上がった。
「じゃあ行くけど……亮は?」
動き出す様子のない俺を不審に思ってか、奈緒が聞く。
「……もう少ししたら行く」
もちろん授業に出る気はないけど、奈緒の手前嘘をつく。
「ふぅん。……あ、ねぇ、一緒に帰るって事になってたけど、今日はバイトなんだ。
授業終わったらすぐ帰るから、亮も時間気にしないで帰ってね」
「バイトって、一昨日もだったよな。結構入れてんのか?」