イジワルな恋人
【第四章】 気持ち


【亮SIDE】


それは本当に一瞬の出来事で、正直、何が起こったんだかわからなかった。

ただ、目の前の奈緒の顔が今までにないくらいに赤く染まっていて。

離された手に、2人の身体が離れる。

奈緒はまだ涙の浮かぶ目を気にしながら、恥ずかしげに顔を赤くしてうつむいた。

そして、俺の表情を伺うように見つめる。


その姿に……、俺は奈緒の肩を抱いて自分の方へ抱き寄せた。


俺ん中に、感じた事のない感情が湧き上がる。

多分……〝愛しい〟とか、そんな感情が。


……嫌われるかもしれねぇな。

そんな不安が頭をよぎって……でも、それでも熱くなった自分を止められなかった。


抱き寄せた奈緒を少し離して、片手は背中に回したままもう片方の手で奈緒の顎をあげて―――……。



奈緒の唇を塞いだ。



「……っ」


突然のキスに、驚いた奈緒が小さく抵抗したのが分かった。

けど、キスを深めるごとに、抵抗が緩んでいく。



腕の中の奈緒を離したくなくて、いつの間にかキスに夢中になっていた。



< 78 / 459 >

この作品をシェア

pagetop