イジワルな恋人
【第四章】 気持ち
【亮SIDE】
それは本当に一瞬の出来事で、正直、何が起こったんだかわからなかった。
ただ、目の前の奈緒の顔が今までにないくらいに赤く染まっていて。
離された手に、2人の身体が離れる。
奈緒はまだ涙の浮かぶ目を気にしながら、恥ずかしげに顔を赤くしてうつむいた。
そして、俺の表情を伺うように見つめる。
その姿に……、俺は奈緒の肩を抱いて自分の方へ抱き寄せた。
俺ん中に、感じた事のない感情が湧き上がる。
多分……〝愛しい〟とか、そんな感情が。
……嫌われるかもしれねぇな。
そんな不安が頭をよぎって……でも、それでも熱くなった自分を止められなかった。
抱き寄せた奈緒を少し離して、片手は背中に回したままもう片方の手で奈緒の顎をあげて―――……。
奈緒の唇を塞いだ。
「……っ」
突然のキスに、驚いた奈緒が小さく抵抗したのが分かった。
けど、キスを深めるごとに、抵抗が緩んでいく。
腕の中の奈緒を離したくなくて、いつの間にかキスに夢中になっていた。