イジワルな恋人
「……―――」
俺が柄にもなく身体を強張らせたのに、女は何も言わず、すぐに目を逸らして階段を下りていった。告白してた男も女の後に続く。
……あいつ、なんて返事したんだろ。
いつもなら気にしないような事を気にしてる自分に気付いて疑問に思うも、俺のど真ん中にハマるような女の外見を思い出して、それも仕方ないと納得する。
俺の、つぅか、大抵の男のストライクだろ。
決まった女を作る気もねぇけど、あいつくらいの女なら隣に置いてもいいよな……。
言い寄ってくる女に手を出した事もあったけど、今はそれも苦痛に感じる事がある。
外見やら金目当てで言い寄ってくる女に、嫌悪すら感じる。
相手がいい加減だから俺も、とか言うわけじゃねぇけど。
最初から魂胆が分かってる相手に、真面目になんかなれねぇし。
都合のいい時だけ利用して、後は適当に。
俺をステイタスにしたい女なんだし、利用したってお互い様だろ。
俺が女嫌いになったのは、親父の金と親父譲りのこの顔のせいだな……。
「水谷の事なんかいいからさぁ……。ねぇ、いい加減、あたしを彼女にしてよぉ」
後ろを追い回す由利を煩く思いながらドアを開ける。
そして、さっきまで女のいた場所を眺めてから、階段を下りた。