イジワルな恋人
「……明日から送り迎えするからな。
バイトのシフト教えとけ。時間に迎えに行ってやる。
……今日みたいなこと一回で十分だ」
揺れる車の中で窓の外を見ながら言うと、奈緒はクスクス笑い出す。
「……うん。なんか朝から夕方までいつも一緒にいるなんて、本当の恋人みたいだね」
「……ずっと一緒にいて、お互い意識しだしたりしたら……、
どうする?」
外に向けていた視線を、奈緒を移しながら聞く。
白状すると……、自分の奈緒に対する気持ちに気付きかけていた。
認めたくなかったから無視してたけど、やたら必死になったり、一緒にいる時間を苦痛に思わなかったり……。
それは、相手がこいつだからって事に、半分気付いてた。
……だから、探るような質問をした。奈緒の気持ちを知りたくて。
俺の視線の先で、奈緒は笑顔を作った。
「大丈夫だよ。あたしは絶対に誰かを好きになったりしないから」
そう言った奈緒の瞳は、笑っていたのにどこか曇って見えた。
奈緒の言葉に、俺は黙ったまま外の景色に目を向けた。