イジワルな恋人
翌日、奈緒は家の前に俺の車が止まっている事に気付くと、笑顔を向けて乗り込んできた。
「おはよぅ」
俺は合わせた視線をすぐに背ける。
「あ、感じ悪い!」
奈緒は少し文句を言ってから前を向いて進行方向を眺めていた。
昨日帰ってからも、今朝起きてからも、ずっと奈緒の言葉の意味を考えていた。
なんで奈緒があんなに頑なになってんのか。
そもそもの男嫌いの原因はなんなのか。
中一の時に一日だけ付き合った奴が関係してるのか。
……もしかしたら、過去に昨日みたいに襲われたのかもしれない。なんて、いらない心配までして、何度もこんなの俺らしくねぇ、と思って止めようとした。
だけど、そう思ったところで、簡単に頭から出ていくハズもなくて。
結局、その事が頭から離れなかった。
……マジだせぇ。
「……亮?」
「ん?」
遠慮がちに声をかけてきた奈緒を振り向く。