イジワルな恋人
奈緒は俯きながらも笑顔で答えた。
そんな奈緒の笑顔に無神経にそんなことを聞いた自分を後悔する。
「そんな顔しないでよ。あたしは大丈夫だから」
逆に励ましてくる奈緒の笑顔が、余計に胸を締め付けた。
後になって、親父に事情を話して、金を用立てようかとも思った。
でも奈緒はきっと受け取らないと思ってやめた。
……金があったって役に立てない自分に気付いて、情けなくなる。
今まで何もかもが思い通りになってきたのに。
奈緒に対しては、励ます言葉一つも思いつかなくて。
自分の無力さを初めて感じた。