イジワルな恋人
【奈緒SIDE】
「ふー……」
バイトが終わって外に出ると、もう朝焼けが始まっていた。
朝の空気は吸うだけで身体の中の悪いものを浄化してくれそうで気持ちがいい。
……亮はまだ寝てるだろうな。
っていうか一日の大半は寝てる気がする。
たまには朝早く起きるのも気持ちいいのに。
亮の事を思い浮かべながら笑みをこぼす。
視線を空に戻すと、丁度太陽が登りかけているところで、思わず足が止まる。
オレンジとも白ともいえない光を放ちながら、太陽が丸い形を現す。
……みんなが生きていた頃は、よく初日の出を見に行ったっけ。
頭の中に、楽しそうに笑いあう家族の顔が浮かぶ。
過去の事なのに、まるで触れそうなほどに鮮明なお母さん達が……。
……―――なんで、あたしだけ生きてるんだろう。
「水谷?」
隠してきた本心が胸をついた時、不意に後ろから声をかけられた。
時間が時間なだけに、ゆっくり振り向く。