イジワルな恋人


「……ごめん、見逃して?」


顔の前で手を合わせると、真ちゃんは困り顔で笑ってため息をついた。


「……まぁ事情が事情だしな。健の手前見逃すけど……でも、くれぐれも無理はすんなよ?

いざってなれば俺が助けてやれるんだからな」

「うん。ありがと」


ほっとして笑顔を浮かべると、真ちゃんもあたしを見て微笑む。


「まだ時間あるから乗っけてってやるよ。この時間なら誰にも見られないだろ」


真ちゃんが少し後ろに置いてある車を指差しながら言う。


「教師と生徒の熱愛なんて大スクープだもんね」

「笑い事じゃすまねぇよ。ほら、帰るぞ」


真ちゃんの言葉にクスクス笑いながら、車に乗り込んだ。

別れ際、「寄ってく?」って聞いたあたしに、真ちゃんは、

「また時間がある時に出直すよ」って言って学校に向かった。


あたしは笑顔で手を振ってから、真ちゃんの車が小さくなるまで見ていた。


もうすぐ三年……。


真ちゃんの時間は進んでるみたいでよかった。

健兄も安心するよ。きっと―――……。




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