イジワルな恋人



【奈緒SIDE】


「奈緒!」


屋上から教室に戻ると、友達の笹田 梓が教室の奥から駆け寄ってきた。


「梓……、どうしたの?」

「どうしたの? じゃないよ!

一人でいなくなっちゃうから、また奈緒をひがんだ女子達に呼び出されたのかと思って心配してたんだから!」

「……ありがと。でもそんなに心配しなくても大丈夫だよ? 女の子が相手なら負けないと思うし」


入学して以来、男子だけじゃなくて女子にもよく呼び出される。


その事を知ってる梓の心配に、あたしは笑顔を返した。


女子の呼び出しの場合、大概が「いい気になるな」って感じの言葉での嫌がらせだった。

相手も数人ではくるものの手をだしてくる訳でもないから、特に反発もしないで穏便にその場をやりすごしてる。


「奈緒が合気道の段持ってるのは知ってるけどさー、それでも心配なものは心配なの。大体奈緒はさー、いっつもいっつも一人で……」


会話が長いお説教に傾きだしている事に気付いて、あたしは慌てて話題を変える。


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