イジワルな恋人
【亮SIDE】
車が走り出して、しばらくした頃、肩に重みを感じた。
不思議に思って視線を移すと、奈緒が俺の肩にもたれかかっていて。
……こいつ何やってんだ?
奈緒との近い距離に、身体が少し強張る。
冷静を保とうと、奈緒を意識しないように窓の外に意識を集中する。
それでも、左肩に全神経が集中していた。
しばらくそのままの体勢をして落着きを払おうとしていたけど、あまりに動かない奈緒に不安になって、奈緒の顔を覗きこんだ。
……信じらんねぇ。
奈緒の顔を確認してから、頭を背もたれに付けて車の天井を仰いだ。
……なんでこの状態で寝れるんだよ。
まだ車乗って5分も経ってねぇのに……。
もう一度奈緒の顔を覗くと、奈緒は俺の視線の先でぐっすり寝ていた。
車が少し大きく揺れても全く気付かない。
そういや、こいつが寝過ごすなんて初めてだよな……。
金曜も土曜の明け方までバイトっつってたし。疲れてるのかもな……。
「北村。始業までまだ20分あるから。……ゆっくり走れ」
「かしこまりました」
空いてる手で頬杖をつきながら言うと、北村が微笑みながら返事をした。