イジワルな恋人
【奈緒SIDE】
「……おい、奈緒」
遠くから聞こえてくる亮の声に、ゆっくり目を開けた。
「ん……」
「……学校着いたけど」
声のする方へ顔を向ける。
すると、亮の顔は、あたしのすぐ上にあって……。
びっくりして慌てて離れる。
「……あれ?」
ここ、亮の車の中……?
「あ……」
ドアの閉められる音に振り向くと、亮はすでに校舎に向かって歩き出していた。
あたしも急いで亮の後を追う。
「ごめんね、あたし寝ちゃって……」
「……」
亮の顔を横から見上げながら言っても、亮は目も合わせないでスタスタ歩いていく。
……怒ってるのかな。
わざわざ迎えに来てくれたのに、待っててくれたのに寝るなんて……失礼だよね。
寝てしまった自分を反省しながら、亮の少し後ろを俯きながら歩く。