イジワルな恋人
【第五章】 タメ息
「奈緒―」
教室に入ると、愛達とロッカーの前に集まって楽しそうに話をしていた梓が手を振ってきた。
「おはよ、何の話してたの?」
「体育祭。何に出るかなって。ほら、これ」
梓が見せてくれた、エントリー種目が書いてあるしおりを覗き込む。
○100メートル走
○800メートル走
○400メートルリレー
○騎馬戦
○借り物競争
色々と種目が並んだ最後に、「フォークダンス」の文字。
「……フォークダンスって」
「ね! ありえないよね」
あたしが漏らした言葉に、集まってたみんなが頷く。
「なんかどれでも面倒くさいよねー。
奈緒は走るの速いし、リレー選手に選ばれるんじゃない?」
梓が種目のしおりを見ながら言う。
「梓の方が速いじゃん。
リレーかぁ……出るのはいいけど練習とかが放課後だとバイト間に合わないしなぁ」
「奈緒ってなんでそんなバイトばっかしてるの?」
「あ、えっと……」