サプライズで彼女の家に行ったら知らない男とキスしてた
「……あんた、何してんの」
はっと振り向くと、ケーキの箱片手に崎山が立っていた。
俺が手落としたキリンを拾い上げて怪訝そうな顔をする。
「え?あかねは……」
俺は何も言わずに、力無く新聞受けを指差した。
崎山はまだ何か言いたそうな顔をしていたが、俺の様子を察して新聞受けを開けてのぞいてくれた。
「どうしたの。一体なにが……」
言いかけた崎山の台詞が、止まった。
新聞受けからばっと手を離すと、崎山は血相を変えて扉を開けた。
そのとき、崎山が持ってたキリンさんが床に投げつけられて粉々になった。
かわいそうなキリンさん。
……とか思ってたら、崎山に腕を引かれて俺も部屋に突入した。
すげえよ、俺いま、現実逃避してたよ。
「あかね?何やってんの?この人、誰?」
崎山が入っていくと、あかねと男は電流が走ったみたいに飛びのいてた。
「え……比呂子……なんで……っ……尚くん!?」
あかねは俺を見て、目を見開いた。そりゃそうだよな。俺、お前に、明日帰るって言ったんだもん。
俺は呆然としたままで、崎山だけがわなわな震えていた。
情けないね。
あかねの唇がまだてらてら光ってんの見て、俺は失神しそうになったよ。