サプライズで彼女の家に行ったら知らない男とキスしてた

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今朝まで、俺は本当に長野にいた。



大学の春休みを利用して、自動車免許の合宿に参加していたからだ。


そして昨夜合宿が終わるなり、すぐに特急に飛び乗り今朝一番に東京駅に到着した。




彼女には「明日到着する」と嘘をつくことは、最初から決めていた。

特急電車の席に座って、俺は早速メールを打ち始めた。





ここまで計画通り。





「……なんでそんな嘘着くの?」




ここから計画外。





俺がせっせと彼女宛てに打っていたメール画面を覗き込んで、崎山は言った。





「うおおおおおおおお!?なっ………なんで、お前……ここに……」



「なんでって、あんたの隣の席だから。ほら、どいてよ」




崎山は鬱陶しそうに足元の俺の鞄を蹴り払って、俺の隣に座った。


電車の出発を告げるアナウンスが鳴る。



「隣ィ?」


「指定席なんだから仕方ないじゃん。っていうか、同じ学校でとってもらったんだからそりゃ隣だろう」


「……うっせえ話かけんなっ」


「ね、それあかねに送るんでしょ?なんでそんな嘘つくの」




なおも図々しく俺の携帯を見ようとする崎山を振り払って、俺は崎山に背を向けるように身をよじったままメールを打ち続けた。



「お前に関係ないだろ」


「ふうん。じゃあ私もあかねにメール送ろっかな。木下が嘘ついてますよーって。まさか、お前、浮気とか?」




東京に着くまでに胃に穴が空きそうだぜちくしょう。



     
  
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