サプライズで彼女の家に行ったら知らない男とキスしてた
それから薄ら笑い続ける崎山を無視して、俺は到着を待った。
途中、開通10周年記念だとかでドリンクサービスのコンテナが回ってきて
「あ、コーラください。こちらの彼女にはぬるい水を」
とほがらかに言い放つ以外俺は何もしゃべらなかった。
東京まであと10分ほど、のアナウンスが流れる。
イヤホンをはめて読書にふけっていた崎山は、思い立ったように俺に顔を向けた。
「今日、うちのマンションまで直接行くの?」
「………」
「行くとしたら昼?夜?」
「……たぶん夜」
「途中でピンポン鳴らしていい?」
「お前……そんなに俺をノイローゼに追い込みたいの?」
「違う。私、着いたらすぐバイト先寄るけど、そん時余りのケーキもらえるから、あげるよ。二人で食べなよ」
「はあ?なんでそんな……」
「渡したらすぐ帰るし。上がりこもうなんて思ってないよ。ケーキに一周年おめでとーって書いてあげる」
崎山の脳内ではもう訪問が確定しているらしく、にこにこと笑っていた。
なんで崎山が俺のためにそこまで?と一瞬だけ思ったが、違う。
この場合、優先されたのは、あかねか。
「あー、あかねに会うの久しぶりだなあ。楽しみっ」
「……すぐ帰れよ。ケーキだけ置いてすぐ帰れよ!!」
こんなやつに、とは言え、同性にも愛されまくりな俺の彼女。
ちょっと嬉しい。