現代アリス∞
どうせ9時になればわかるだろうことだし。
気に掛ける必要なんてどこにも無い

私はメインジュエリーの陳列、スピカさんは接客に励みやっとの事で8時半のピークを過ぎた。

けど、なんでオーナーはピークを過ぎた時間にわざわざ店へと足を運ぶのだろう?
どうせなら一番忙しい時間に来てくれた方が助かるのに
きっとそこまで頭の回らない頭の悪い責任者なんだろうな。

忙しさゆえにイライラしていたからか、ついそんな事を考えてしまう。
普段はこんな事考えたりしないのに
今日はおかしな日だ。


今思えばこの時こんな事を考えたりしなければ
私の人生少しくらいいい方向に進んでいたのかもしれない・・・


「誰が『頭の悪い責任者』だって?」

その声は自動ドアの開く音と共に聞こえた。
入ってきたのは青い髪の綺麗な顔をした少年
歳は私と変わらないだろう

「おはようございます」

スピカさんは少年に挨拶をする。

「あの、この人は・・・?」
「あぁ、この方がオーナーですよ」

まさかとは思ったけど、この人がね・・・
私の目にはどうしても彼は17か18歳位の少年にしか見えない。
少し大人びてはいるけど。
この人が、このジュエリーショップのオーナー?

私は信じられないと内心思いながらも、“オーナー”と呼ばれる少年に頭を下げた。
けど、少年は何故かこちらを訝しげに眺めている。

「あ・・・あの、なんですか?」

少年は私の前に立ち顔を覗き込んでくる。
近くで見ると結構背は高い。
しかもかなり美形
思わず見とれてしまう程だ
しばし見とれていると突然少年の口が動いた

「頭の悪い責任者でわるかったな」

私は驚きのあまり目を見開く。
もしかして、声に出してた?・・・私
少年の猫のような金色の目はじっと私を見つめている
早くこの状況から抜け出したい

「何をおっしゃるんですか?この子は一言もそんな事言ってませんよ」

スピカさんの一言で少年は私から離れた

「・・・そうか。ごめん、気にしないでくれ」

少年は頭上にクエッションマークを飛ばしながらそのままスタッフルームに入っていってしまった。
< 3 / 21 >

この作品をシェア

pagetop