現代アリス∞
「突然こんな事いって悪いけど・・・」

ヒカルは複雑そうな顔をしながらも私の話を聴いてくれている。
結局私はこのバイトを今日限りでやめることになった


街を歩いていると未だに
チナツの事がニュースなどで報道されている。
聴きたくもなのに勝手に耳に入ってくる情報
嫌気がさす

このまま家に帰るのも気が重くて
取り合えず走っていつもの公園へと足を運んだ。

ここはめったに人も来ないし
雑音も無い
不必要な情報もなにも、ここにいればきっと私に届かない。

でも、何故か胸が痛む

「苦しいよ」

ぽつっと一言呟いた言葉に
返事をするものは誰もいない
きっと私逃げてる
格好悪い

不意に触れた頬には本来なら流れているはずの涙は見つからない
いつから私は泣かなくなったのだろう?
いや、”泣けなくなった”の方が正しいか
この涙と同じように、私はいつか笑う事も出来なくなる
きっと近い未来
全ての感情が私から奪われていく

誰に?

押し寄せてくる悲しみと不安
俯いてベンチに座っていると誰かが私に手を差し伸べた。

「アリスは一人じゃない、行こう」

一人になりたくない
私は一人じゃないの?
とにかく私を一人にしないで!


その一心私はその手を握った
差し出された手の主は・・・ヒカル

ヒカルは私の手を握ったまま走り出す

『行こう』

一体どこに?
疑問に思いながらも聞くタイミングがつかめなくて聞き逃す。
しばらくノンストップで走り続けてだんんだんと私の通っている高校『栄徳高校』が近くに見えてきた。
よく見ると今走っているのは私が学校に行く時に通っている通学路だ。
無我夢中で走ってたから気がつかなかった・・・
ヒカルは走りながらこちらを見て軽く微笑む

「お友達に会いに行こう」

一瞬意味が理解出来なかった
でもすぐにその意味に気がつく

チナツが最後に行った場所
栄徳の旧校舎へ-・・・

ヒカルは華奢な見かけによらずしっかりとした走りで一歩ずつ確実に道を進む
私はその手に引かれて風邪をきる
なんだか不思議な感じ
握った手から感じるヒカルの体温が暖かい


ドキドキする


柄じゃないけど






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