~ワタシと君と~
「よかったら、わたくし達とご一緒なさらない?絶景の場所を見つけましたの」
「あ、そ、そうでしたの?でもごめんなさい。今日は1人でいたい気分で……」
「あら、そうでしたの。あなたのお母様の事を話そうと思っていたのですけど。来週は、わたくしの誕生日で、お母様とお父様が宝石を買ってくださるようでしたから。ではこの話はまた今度ということで。失礼しますわ」
そう言うと、女子達は離れていった。
その途端、わたしの笑顔は消えていく。
疲れるから、あの話し方が。
わたし、琴音(ことね)やなぎは《珠光(じゅこう)学園》に通う、高校2年生。
学園に通う人達は、超お金持ちの令嬢や子息ばかり。右をみれば「ごきげんよう」、左をみれば「休日はスイスへ」。 制服は、一着約50万。誕生日には2000万もかけ、盛大なパーティー。そんなお金持ちに生まれ育った人が、集まった学校。だから平気であんなサムイ言葉を言える訳。
そういうわたしも、一応はフランス人の母、琴音マリー・トゥランスト(宝石を扱う企業に勤める社長)と日本人の父、琴音紅(こう)(「くれない」という名で有名な作家)をもつ、1人娘。束縛される事が何よりも嫌だったわたし。こんな家柄に生まれたために、限られた行動しかとれなかった。

だから今回は1人でいたかったのだ。この自由なひとときを満喫するために……。

着替えた後は、それぞれ海へ行ったり、パラソルの下で世間話をしたり。みんなはいきいきと自分達の時間を楽しんでいる。
わたしといえば、浜辺を1人で歩いていた。一般人も来ていたらしく、親子連れ、カップル、女のコ同士、男のコ同士……。
「自由なんだろうなぁ」
そう呟くと、ふいに何かにつまづいた。
< 2 / 9 >

この作品をシェア

pagetop