その手に触れたくて
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「行ってきます」
玄関にある靴を履きながら、あたしはリビングに向かって声を出す。
「気を付けるのよ」
遠くのほうから微かにママの声が聞こえ、靴を履き終えたあたしは急いで家を出た。
手に握り締めている一輪のユリの花が5月の風になびいてヒラヒラしている。
そのユラユラ揺れている一輪の花を見ながら、あたしは家の前に停めている自転車に跨った。
ペダルに足を乗せ、目的地まで飛ばす。
飛ばす所為で勢いがある風のに握っているユリの花が少しずつ形を崩していく。
やばい。
「…後、もう少し。」
息を切らしながらペダルを踏みしめて、少し坂になっている道を漕ぐ。
道路の左右には沢山の木々で囲まれ、ほんわかとした温かい風になびかれて葉がソヨソヨと揺れている。
…気持ちいい風。
あたしは少しだけ空を見上げた。
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