その手に触れたくて
どれくらい走ったのかなんて全然分かんなかった。
覚えてるのは胸の苦しさだけ。
「何で、あたし…」
零れる言葉は無性にも切なくて、我慢しきれなくなったあたしの頬に、また涙が走った。
忘れよ。忘れなきゃいけないんだよ…
トボトボ歩いてると見慣れた風景になり、ここから自転車を取りに行こうと思ったけど、隼人がいるかも知れないって思ったあたしは、そのまま家まで帰った。
「疲れた…」
家に着いた途端、あたしはバタンと玄関の廊下に倒れこむ。
足が痛い。どれくらい歩いたのか分かんない道のりで足が痛む。
と、言うよりも何度も頬に走る涙のほうが痛々しかった。
「…何だ、お前。」
ガチャッと開いた玄関のドアが開いたと同時に、久し振りに聞いた声が耳に伝わった。
だけど、別に飛び起きる元気すらなくて――…
「泣いてんのか?お前…」
もう一度聞こえたお兄ちゃんの声とその言葉に涙が溢れそうだった。