その手に触れたくて
これ以上、お兄ちゃんに顔を見せたくないあたしは気ダルい身体を起こし、座ったまま靴を脱ぎ捨てる。
何も言葉を交わさないまま二階へと上がるあたしの背後から、
「無視かよ」
小さなお兄ちゃんの声が微かに聞こえるのが分かった。
ホントはもっと話したかった。
久し振りって…
どうしたの?って…
色々話したかった。
だけど今のあたしはそんな気持ちにすらなれなくて、さっきまでの事だけが頭の中を支配していく。
部屋に入りベッドに倒れこみ、顔を枕に埋める。
こうして顔を埋めている間、にも下半身が少し痛む。
そう思うのは、さっきまでの隼人との行為が頭の中を強く過る所為なのかなんなのかは分かんない。
でもこうやって最後に落ち込むのは自分自身って始めから分かってた事なのかも知れない。
隼人に会えない。会って何話せばいいのか分かんない。
隼人はあたしの事――…
もう、これ以上考えたくないあたしは、強く強く目を閉じた。