その手に触れたくて
強張る身体からホッとした安堵のため息が漏れる。
思わず先輩の足取りを追うと、先輩は案の定、隼人の教室を覗き込んでいた。
怖い。分かんないけど何かが怖い。
視界がグラグラ揺れる。
「…月。…ちょ、美月」
不意に聞こえてきた夏美の声に意識がハッとする。
それと同時に気付いたのは、夏美があたしの肩をユラユラて揺すっている所為で、それであたしは漸く気付いた。
視界がグラグラ揺れていたのは夏美があたしの肩を揺すっていた所為。
それも分からないくらいにあたしの意識は遠くにぶっ飛んでいた。
「ちょ、美月、大丈夫?まだ調子悪いんじゃない?顔色悪いよ?」
夏美は心配そうな表情を浮かべ、あたしの顔を覗き込む。
調子悪いのは調子悪い。
今すぐにでも帰りたい衝動に追いやられる。