その手に触れたくて

でも、


「あ、うん。大丈夫」


そう言って、夏美を安心させる言葉を吐いたのもつかの間だった。

あたしの視界に移っている先輩の影がこっちに向かってきている。

離れた所から見える影は、だんだんこっちに近づいてくるたびに顔がはっきりと分かる。

さっき吐き捨てた大丈夫なんて言葉は嘘の様に消え去っていく。


その先輩の顔が間近ではっきりと分かった時、


「ねぇ、」


と言う先輩の声で自分でも分かるくらいの身震いがした。

初めて間近ででみた先輩の顔は可愛いと言うよりも綺麗。

でも綺麗と言うよりもあたしにはキツい顔って捕えた。


確かに綺麗なのは綺麗。女であったら、こんなふうに綺麗になりたいって思う。

でも、そう思うのは人それぞれで先輩は綺麗=キツい感じ。


そんな先輩に隼人が好きになったのも何となく分かる感じがした。


だって、本当に綺麗だし。



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