その手に触れたくて
一瞬だけ先輩を見てすぐに逸らした目は未だに足元を見ていて顔を上げられずにいる。
そうなってしまうのは先輩への謝罪といっていいのだろうか、見る事なんて恐ろしくて出来ない。
「隼人は?」
続けられた先輩の言葉にあたしの目がだんだん閉じていく。
何も考えたくない…。嫌な汗が身体を覆っているかの用に息さえもまともに出来ない。
そんなあたしの隣で、
「来てません」
きっぱりとした夏美の声があたしの耳に届いた。
隼人…来てないんだ。
あたしに会いたくないからかな?
もう見るのも嫌なのかな?
「あっそ…」
小さく呟かれた先輩の声は、少し怒っているような声に、あたしは…聞こえた。