その手に触れたくて

案の定、あたしの答えを答える用に夏美はゆっくりと唇を動かしていく。


「あたし、聞いちゃったんだよね…」

「……ッ、」


ボソっと吐き出した夏美の言葉に何だかよく分からない身震いが襲ってくる。

聞いたって何を?


もしかして隼人、あたしと寝た事、誰かに話したの?

それを夏美が聞いたの?


あたしが簡単に寝る女だって誰かに話したの?

…じゃない。簡単じゃない。あたしは隼人と簡単に寝たんじゃない。


隼人に対する好きって気持ちがあまりにも大きすぎて、あたしの欲が抑えきれなかった。

隼人に触れたかった。


忘れようとしてんのに、余計に忘れられない行動を犯した自分が何だか悔しい。


「別れるか別れないかの瀬戸際だって」


夏美が呟いた声に一瞬だけ逸らした視線が、また夏美へと戻る。



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