その手に触れたくて

学校を終えて、ここ最近、お父さんのお墓に行ってないと気づいたあたしはその帰りの足でお墓に訪れた。

数々のお墓が並べられた一角に足を止め、安藤家と刻まれたお墓の前でしゃがみ込む。

久し振りに訪れたにも関わらず、何も話す事がない。

ただジッとお墓を見つめてるだけで、暫く経ってもここから動く事は出来なかった。


何も予定もなく突然来た所為で、線香すらない。



しゃがみ込んだまま言葉が出ない変わりに溜息ばかりが降り注ぐ。

何しに来たんだろうって思う、あたしの背後から地面に敷き詰められている小石が踏み潰される音に神経がそっちにいった。


誰かが墓参りに来たんだ…


そう思うのは当たり前の事で――…

でも、その小石を踏み潰す足音はあたしの背後でピタッと止まったのが分かった。


夏美?それともお兄ちゃん…

それかママ。

あらゆる人物をあげながら、ゆっくりと顔を後ろに向けると、その思わぬ人物にただただ目を見開く事しか出来なかった。


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