その手に触れたくて

「お父さん…」


別に隠すつもりもなかったし、隼人を無視する必要もなかった。

だからあたしはポツンと呟いた。


「タバコ吸ってた?」

「えっ?」


意味不明な会話に、視線を隼人に向けると、隼人は、


「親父さん」


と呟く。


「うん。吸ってた」


そう言ってすぐ、隼人は何歩か足を前に進ませ、あたしの隣に並んだかと思うと、ポケットから手を出すと同時に一緒に白い箱も取り出した。

その箱から1本の白いタバコを取り出すと、それを咥えて火を点ける。


火を点けてすぐ隼人は口からタバコを離すと、そのまま隼人は目の前にある灰色の線香置きに指に挟んでいたタバコを置いた。


そのタバコから1本の線状になって煙が上へと上がっていく。

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