その手に触れたくて

「ありがと…」


ポツンと呟いたのは本心で、正直、隼人がしてくれた事が本当に嬉しかった。


タバコから出てくる煙を目で追っていると、


「話、あんだけど…」


そう低く呟かれた声に返事すら出来なかった。

これから何言われるんだろうって思うと、正直身体が動かない。


だからと言ってこの墓場では聞きたくない。

何言われるか分かんないけど、どうせ泣く破目になるんだから、お父さんが居る前でなんか話したくない。


正直言って怖い。


何が怖いって言われると、隼人に何かを言われるのが怖い。

もしかしたら、この前の事は無かった事にしてって言われるんじゃないかって嫌な考えが頭の中を過っていく。


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