その手に触れたくて

「ごめん、俺――…」

「いいの!全然平気。むしろ何も気にしてないから。あれは単なる事故。だからもういいの」


隼人の言葉なんて聞きたくないあたしは、急いで隼人の言葉を遮り思ってもない言葉を口にした。

事故なんて嘘。事故にするほど隼人と身体を重ね合った事なんて簡単に終わらせられない。


むしろ今ここで、目の前に隼人が居るって事に嬉しさを感じる。

だけどその半面、もう会わないほうがいいとも思う。


でも心は正直で、好きって気持ちは抑えられない。


「俺さ、」

「隼人ごめん。あたし、気分悪いや。だからごめん、帰るね」


今すぐにでもこの場所を抜け出したいあたしは、隼人の顔を見ることなく下を向いたまま言葉を吐き捨てる。

そのままあたしは隼人に背を向けて、停めていた自転車を動かし足を進める。


隼人が追っかけて来てくれるかもって少し馬鹿見たいな考えもした。

だけど隼人は何も声を出さないものの、あたしの後を追ったりもして来なかった。


だから、もうなんとなく分かった。


隼人はあたしの事を何とも想ってないんだって…


ただの成り行きだったんだって…


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