その手に触れたくて

「うわっ、夏美じゃん」

「お前、最近来ねぇよな」

「また男か?」



扉を開けた瞬間、色んな男の声と笑い声が聞こえ、それに混じって、


「うるさいし…」


呆れ混じりの夏美の声が耳に入る。

その騒がれた声の中から、あたしは無意識に隼人の声を探してた。


「いない…」


ポツリと呟いた声に夏美が反応をし、振り替える。


「え?何か言った?」


慌てて首を振るあたしに、夏美は、入ろうと言って部屋の中に指差す。

夏美が入って行った後を追うように中に入ると、なんだかホッとした。


部屋の中に居る人達を見て、ホッとした。

知らない他校の人達ばかりで隼人はいない。


直司も居なければ颯ちゃんも、あっちゃんも居ない。


良かった…

深く安堵のため息を吐き出すと、あたしは何回か自分の特等席のように座ってた窓側のソファーへと腰を下ろした。


「美月、はい」


目の前に差し出されたのはオレンジジュース。


「ありがと」


それを受け取り、蓋を開けて乾いた喉に流し込んだ。



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