その手に触れたくて
「おぉ、タケ昨日の女どうした?」
入って来て早々、あっちゃんは数人いる一人の男に声を掛ける。
あっちゃんが声を掛けたと同時に周りから、笑い声が漏れてくる。
その異様な笑い声に、あたしは思わず視線を上げた。
「もちろん持ち帰り」
タケと言われた男はそう言って笑う。
「えっ、マジ?…ヤったんかよ」
「だって、コイツすぐ手だすからな」
「お前もだろ」
「誘われたらヤるだろ」
あたしには訳のわからない会話が次々と繰り広げられ、一瞬頭がフラッとした。
訳の分からない話だけど、そこまで馬鹿じゃないあたしは何についてかは分かる。
目線を向けていた顔は徐々に下に落ちていくのが分かる。
男って、みんなそうなのかな?
男って、そんな簡単にヤんのかな…
「…ったく。あたしらが居る所でそんな話すんなっつーの」
呆れとため息が混じる声で夏美が呟くと同時に、ギュッとソファーが擦れる音がし、ソファーが少し沈む。
右隣に無意識に目線を送るとタバコをくわえて火を点けている隼人が目に入った。
どうして、あたしの横に座るの?
どうして、あたしに近づくの?
頭に浮かぶ言葉はいっぱいで、目眩がしそうになる。