その手に触れたくて
「夏美…」
ポツリと呟くと同時に夏美を見つめると、夏美は目で“何?”と問い掛けてくる。
「ごめん…」
喉の奥から必死に吐き出した声は少し震えてて、あたしは立ち上がる。
右隣を見なくても、隼人の視線があたしに向かってるのが分かる。
隼人と居ると苦しくなる。
隼人と居ると切なくなる。
立ち上がったあたしは、足元に置いていた鞄を掴み、ドアに向かって歩いて行く。
「えっ、ちょ、ちょっと美月?!ど、どうしたの?!」
何が何だか分かんない夏美は焦りながらあたしの名前を呼ぶ。
だけどそんな夏美の声も無視して、あたしはドアを開けてすぐ鉄階段を掛け降りた。
やっぱしここには来れないんだ。
隼人が居る限り、来れないし来たくない。
掛け降りてすぐ、あたしは颯ちゃんちから離れる為、駆け足で足を進めて行く。
夕方が近づいてくる為、照りつけていた太陽はだんだんと暑さを和らいでいく。
暫く歩き続けた時、いつも夏美んちから帰る時に見かける公園が目に入り、あたしは迷わず公園の中に足を踏み入れた。