その手に触れたくて
「美月…ごめん」
隼人に背を向けたままの状態で右腕を掴まれ、背後からどうしようもないため息とともに吐かれた小さな言葉。
そのため息混じりの呟きに、涙が出そうだった。
どうしてそこまで謝るの?
もういいじゃん。終わった事なんだし…
って、思ってても心のどこかでは終わりになんてできないって、もう一人の自分が叫んでいるみたいで、苦しくなってくる。
「美月にどうしても言いたかった。…俺、適当な気持で美月を抱いたんじゃねぇから。…俺、美月が好きだから…だから――…」
「勝手な事、言わないでよ。好きって隼人、彼女いるじゃん…彼女いるのに好きとか言わないでよ!!」
気付けばあたしは振り向いて叫んでた。
本当はこんな事、言うつもりなんて無かった。
隼人が悪い訳じゃない。
あたしも隼人に身を預けたんだから…
見上げる先には申し訳なさそうな顔をする隼人が目に入る。
あたしから目を逸らしため息を吐き出した隼人に、
「…ごめん」
あたしは小さく呟いていた。