その手に触れたくて
「謝んなよ。…でも俺、お前の事好きだから。俺と付き合ってほしい」
「隼人の言ってる事、めちゃくちゃだよ…。……彼女は?」
俯いたまま、一番聞きたかった言葉をあたしは、戸惑い気味に吐き出す。
「…別れた」
数秒の沈黙の後、ゆっくりと口を開いた隼人の言葉にあたしは思わず顔を上げた。
「いつ?」
「美月を抱いた日」
あたしを抱いた日?
あの日、確かに隼人の携帯に彼女からの電話があって、あたしは何も言わずに隼人の家を飛びだした。
隼人はあの後、彼女に別れを告げたって事?
でも何日か後に夏美が言ってた。
隼人が別れを切り出したけど彼女が別れないって…
「本当に?」
「あぁ。…まぁ実際はその日じゃねぇけど、でも女とはちゃんと別れたから」
「……」
「ずっと前から美月が好きだった。でも、女いたから言えなかった。でも、もう別れたから。…美月は?」
「え?」
「美月の気持ち聞かせてほしい。…美月が俺の事、何とも想ってねぇんだったら諦めるから」
未だに掴まれている右腕から隼人の温もりが伝わってくる。
このまま隼人とずっと一緒に居たい。
もう、隼人から離れたくないとそう思った。