その手に触れたくて

「…美月…」


そっと離れた唇から隼人は小さく声を漏らす。


「どうした？」


続けられた言葉に呆然としながら隼人を見つめると、隼人の手があたしの頬に軽く触れる。

触れると言うか何かを拭き取るって言う仕草。


「…涙」


そう言って隼人はあたしの両頬に触れた。

気付かなかった。無意識に流れ落ちていた涙に…


心配そうな瞳で見つめる隼人を見てすぐ、あたしは自分の頬に触れ、ほんの少し涙で濡れていた雫を拭う。

拭った後、あたしは軽く首を横に振り、うっすら笑みを見せ隼人を見上げた。

隼人も同じように笑みを返す。でも…あたしには悲しそうな笑みに見えた。


あたしが無意識の内に涙を流した所為なのかも知れない。

でも隼人の事が気になるの…気になって、気になって…


もう一度、隼人に近づきたくて、あたしは隼人の胸にトン…と頭をくっつけた。


隼人はそれを受け取るようにあたしの後頭部に手を添え優しく撫でる。