その手に触れたくて

隼人はバイクに跨って、後ろを軽くポンと叩く。

乗れと言う合図なんだろうか…、それでも納得出来ないあたしは、


「ねぇ、隼人?」


隼人の横に立って腕を掴み軽く揺する。

その揺すっている左腕に隼人は一旦、視線を落としてからゆっくりとあたしを身構えた。


「何でもねぇって、気にすんな」

「気にすんなって言われても気にするよ!!ねぇ、隼人――…」

「大丈夫だから」

「大丈夫じゃないよ。だって――…」

「美月、どした?」


“だって、どうみてもあれはヤバイじゃん”


そう言葉を続けるつもりが隼人の冷静な声によって、閉ざされた。

勢いよく言葉を続けていた所為で、隼人の腕を掴んでいた手に汗が滲む。

それを感じたあたしは隼人から手を離し自分のスカートを握り締めた。


「美月?何焦ってんの?大丈夫って言ってんだろ?」


優しく言葉を続けられ、隼人はあたしの頭を何度か優しく撫で続ける。

その隼人のしてくれた事で少しは気持ちが和らいだのかも知れなかった。


でも、少しだけ…

ほんの少しだけだった。


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