その手に触れたくて
隼人は悲しそうな瞳であたしを捉え、頬から肩に手を滑らす。
そのまま肩からあたしの腕まで隼人は手を滑らし、あたしの腕を強く握り締めた。
「心配すんな」
滑らかに入り込んできた隼人の言葉に、
「じゃあ、」
と、あたしは勢いよく言葉を続けた。
隼人はあたしの声にビックリしたのか少しだけ隼人の身体がピクッと動く。
「じゃあ約束して?明後日、あたしと一緒に居て?」
「分かった」
隼人はそう言って、うっすら笑みを漏らし、あたしにメットを渡す。
その渡されたメットを被ってバイクに跨り、隼人の腰にしがみついた。
本当はこう言う言葉ってうっとおしくて面倒くさい言葉なのかも知れない。
付き合った事のないあたしには分かんないけど、きっとそうだと思う。
でも、そう思われてもいい。今だけそう思われてもいい。
行ってほしくないくらい隼人と一緒にいたい。
もう、人の死なんて見たくないんだ…
もう見たくない。