その手に触れたくて
キッ…っと短い音を切らせたと同時にあたしの目の前で自転車を停め、隼人は荒い呼吸を整える。
未だに耳に当てている電話から呼び出し音が聞こえ、それと重なって目の前にいる隼人のポケットから密かに着信音が聞こえる。
隼人は自分の顔の前で手を合わせ、
「ごめん…」
荒れた呼吸とともに呟いた。
「隼人…」
隼人の顔を見たあたしは安堵のため息をつき、未だに鳴り続けている携帯を切る。
「マジごめん」
そう呟いた隼人に近づくと、隼人はあたしの頭をクシャっと撫でた。
「もう来ないかと思った」
「…んな訳ねぇだろ。ちょっと明け方までダチの所にいて、帰って休むつもりがそのまま寝てた」
「心配すんじゃん。だったら電話してよ」
「いや…電話する時間があんだったら急いで美月んちに行こうと思って。…っつーか、美月だって俺に電話してんの今だろ。気になんだったらもっと早くしろよ」
「だって…」
そう小さく呟くあたしに隼人は薄ら笑い、それにつられてあたしも小さく笑う。
…だって、隼人を待つ事だけしか考えてなかったんだもん。
そう心の中であたしは小さく呟いた。