その手に触れたくて
「なんか食った?」
そう聞いてくる隼人にあたしは首を振る。
「何か食いに行こうぜ。美月、何食いたい?」
「何でもいいよ」
「何でもって分かんねぇじゃん」
“乗れよ”
そう付け加えて隼人は後ろに視線を落とす。
あたしはその言葉通り、隼人の後ろに跨った。
「隼人の好きなのでいいよ 」
そう言うと隼人は、
「ん〜…」
と語尾を伸ばせながら、あたしの腕を掴み、自分の腰へとあたしの腕を回す。
その些細な行動にさえドキッとしてしまうあたしは可笑しいのだろうか。
当たり前なんだろうか。
何もかもが初めてのあたしには付き合うと言うのがいまいち分かんなくて、どうしたらいいのかも分かんない。
本当は、あれが食べたい、これが食べたいって言うの?
それってワガママなんじゃないの?
けど、何でもいいって言葉が一番、迷惑なのかも知んない。
あたしだったらはっきりしてほしいって思うし…
でも、
「じゃあ、お好み焼きでもいい?俺がよく行く所」
隼人は案外簡単に決めてくれた。
あたしは何でも良かった。隼人と一緒に居られるのなら、隼人と同じ物を食べられるのなら。
だから素直に「うん」って応えた。