その手に触れたくて

暫く俯く隼人を見つめていると、隼人はソッとあたしの頭に触れ、そのまま優しく撫でる。


「分かった。けど、家に電話しとけよ」

「うん」


あたしはすぐに携帯を取り出し、家に電話をした。

ママが電話に出て、要件を話すと、ママは“わかった”って優しく応えてくれた。


隼人の事は何も言ってないけど、きっとママは夏美と居ると思っている。

まぁ、けどいいんだ。

男といるなんて、自分から言うのは何か恥ずかしいし。


「じゃー…秘密基地でも行くか」

「秘密基地?」


携帯をパチンと閉じると、隼人は密かに微笑む。


「そう。俺しか知らない場所」

「隼人しか知らないの?」

「あぁ。だから誰にも言うなよ」

「うん」


ちょっと嬉しかった。

隼人しか知らない場所にあたしを連れて行ってくれるのが。

その後、本当に隼人しか知らないのか確かめる為、何度も何度も聞いた。


“本当に隼人しか知らないの?”


隼人は何度も何度も“あぁ”って応えてくれて、あまりのあたしのしつこさに、最後には“うぜぇ…”って苦笑い気味に返してくれた。


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