その手に触れたくて
暫く立ち尽くして息を整えている間、隼人はひたすらあたしの背中を擦ってくれていた。
「もう大丈夫。行こ」
顔を上げ、深く深呼吸をして隼人に視線を送る。
暗闇の中、辺りは見えないけど隣にいる隼人の表情だけはちゃんと読み取れる。
隼人は口元に笑みを作りあたしに頭を数回撫でた。
「大丈夫か?無理ならおんぶしてやるぞ」
「えっ、いいよ。重いし」
あまりの隼人の発言に、何故だか一旬だけ顔が赤くなったように思えた。
「俺より重くねぇから大丈夫」
「隼人より重かったらヤバいじゃん」
「そうか?」
「そうか…って、ヤバすぎじゃん。ってか、早く行くよ」
隣でクスクス笑っている隼人の腕を引き、あたしは後、何段あるか分からない石段を登り始める。
リズミカルに軽快にに進んで行く足取りも、さすがに歩数を重ねるごとにだんだんと歩くスペースが落ち、いつの間にかあたしの前には隼人がいた。
「頑張れ、後もう少し」
隼人はあたしの腕を引く様に足を進めて行く。
息を切らせながら暫く歩き、嬉しさの達成感から最後の一段を思いっきり踏みしめ地に足を付けた。