その手に触れたくて
「やっと着いた」
荒れた息とともに吐きだすと、隼人はクシャッとあたしの髪を撫でる。
「頑張ったな。前見てみ」
そう言われてゆっくりと顔を上げ、視線を前に向けると、何て言ったらいいのか分かんない衝動に覆われた。
目の前に広がるのは芝生が生えた野原。
山の上だからそんなに広くはないけれど、十分に遊べるくらいはある。
その矢先、見えたものは、なんとも言えない綺麗な夜景だった。
「…綺麗」
「だろ」
見つめる先はキラキラと輝く人工の夜景。
さっきまで荒れていた呼吸が嘘のようにスッと消えていった。
夜景と空の境界線に輝くのは別の輝。
見上げる先には空一面に広がった小さな星の輝きが照らしていた。
まるで別世界のようだった。
生まれてきて初めて見た別世界に足を踏み入れたみたいだった。
隼人は何も言わずに足を進め、丁度野原の中心で足を止め、その場に腰を下ろす。