その手に触れたくて

「なんか分かんねぇけど、ここに来たらすげぇ落ち着く」


隼人はそう言って、そのまま大の字になって寝転んだ。


「うん。なんか分かる気する」


あたしも同じように隼人の隣に行き、その場で仰向きになって背中を地に付けた。

空一面に広がる星がまるで目と鼻の先にあるように間近で見え、輝いている星、全てが両手で囲めそうだった。

この夜空の下、あたしと隼人が2人でいる事を幸せに感じる。

同じ場所にいて、同じ風景を見て、同じ空気を吸って、身近に聞こえる隼人の吐息に安心感を感じた。


あたしがわがままを言わなかったら、今、隼人とはここには居なかった。

隼人はあたしをここには連れては来なかった。


ごめんね。

面倒くさい女でごめんね。


けど、嫌いにならないで。


そっと心の中で呟き、隣に寝転んでいる隼人の手を、そっと握り締めた。


「ん?」


隼人は小さく声を漏らし、少しだけあたしに視線を向ける。

何も無いように小さく首を振るあたしに、隼人は身体をあたしに近付けた。


「寒い?」

「うーん…大丈夫」


寒くまではいかないけど、やっぱし山だから肌寒い風が頬を掠める。

曖昧に呟いた所為か、隼人は握っていたあたしの手をそっと離し、そのまま腕を上げてあたしの後頭部に腕を置いた。


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