その手に触れたくて
「…うん」
あたしは小さく呟いた。
「明日、補習終わったら美月んち行くから」
「…うん」
隼人が起き上がると、隼人の腕に乗せていたあたしの頭の所為で身体も必然的に起き上がった。
隼人が立ち上がって、あたしの手を引き、あたしを立ち上がらせる。
そして隼人は両腕を空に向け伸びをして大空を見上げた。
「あー…、でもやっぱ補習面倒くせぇ」
そう言って隼人は腕を下ろしため息をついた。
「えっ?行かないの?」
「いや、行くけど朝起きれっか分かんねぇ…から、美月、明日の朝起こして電話で」
「え、あっ、うん。いいよ。何時?」
「8時」
そう言って隼人はあたしの手を握り登ってきた長い階段まで足を進める。
「…分かった」
ちょっと冷たくなった手が一気に隼人の温もりで温かくなっていく。
触れたくて、触れたくて、ずっと触れたかった隼人の手に触れられる事が夢のように感じる。
長い階段の真ん中ぐらいにある街灯が切れかけてチカチカ点滅をする。
その点滅の所為で身震いがきた。
怖い。…怖い。
キョロキョロ辺りを見渡しても草木ばかり。
風がフワっと吹くたびに草木が揺れ余計に怖さを増す。