その手に触れたくて
家の中に入ると珍しくリビングには明かりが点いていた。
ママかな…。
鞄の中に入っている携帯を取り出して時間を見ると、00:20。の文字に思わずビックリしてしまった。
まさかこんな時間になっているとは思わなかった。
隼人と居る時間があまりにも速すぎて、時間なんて一切気にしていなかった。
でもまぁ、欲をいえばもう少し一緒にいたかったな…。
とりあえずママに帰った事だけを伝える為、リビングの扉を開け顔を出すと、テーブルの上に何缶かのビールの空き缶とその前でタバコを咥えているお兄ちゃんが目に入った。
「あっ…」
思わず声を出すあたしにお兄ちゃんは振り返る。
そして振り返った瞬間、お兄ちゃんの眉が一気に寄ったのが分かった。
開けるんじゃなかった…。
ってか、ちゃんと外にある車を確認するべきだった…
しくじった…と思いながら開けた扉を閉めようとした時、
「おい」
お兄ちゃんの呼び声であたしの手は止まった。
「帰ってたんだね」
何気なく言った言葉に、一応お兄ちゃんは「あぁ」って返事を返してくれる。
でも…