その手に触れたくて

「お前、いつもこんな時間に帰ってんのか?」


そう言ったお兄ちゃんはタバコを口に咥え、あたしに目線を送る。


「ううん。今日だけ」

「遅くなったら危ねぇから早く帰って来いよ」

「うん。ママは?」

「寝てる」

「そっか…。お風呂入るね」

「あぁ」


リビングの扉を閉めて、あたしは自分の部屋へと向かう。


向かう途中、あたしの口から安堵のため息が漏れた。

その安堵は勿論お兄ちゃんであって、たまにお兄ちゃんはお父さんみたいに煩い時がある。

まぁ、それは心配して言ってくれてるんだって分かるけど、あまりの煩さにまいる時もある。


でも今日は何か、あっさりしていたな…。


お風呂を入り終えた後、乾燥している肌に化粧水をつけ、携帯を手にベットに横たわる。

2つ折りの携帯を開けるとメールのマークが画面に映し出されていて、思わずあたしの顔から笑みが漏れた。

送り主は思ってた通り、隼人だった。



“今帰った。早く寝ろよ~おやすみ”



でも、何かが不安だった。



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